小説・漫画好きの感想ブログ

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そして彼女は・・・・ 続編

 前回のお話の続きです。
 気になる方は、12日の項をご参照の上でお読み下さい。
 さて。どーする、どーなる状態のまま駅に近づいた僕でしたが、その顛末は。。。。
 
 もうあと少しで駅につくというところで、その女性はいきなりすっと僕の肩から頭を外すと頭をひとふりして僕の方に顔を向けた。初めて正面から見たその顔は、横顔から想像していたより遥かに美人で、すっとした鼻筋に、ややつり目気味のシャドウの濃い強烈な目力の持ち主だった。黒目が圧倒的に多く、交際の彩りを感じさせないくらいに全体がみずみずしい。その僅かたりとも眠っていたようには感じられないくらい、曇りなく開いた目が至近距離から僕の顔に強烈な視線を送っていた。物理的な力が加わっているんじゃないかと思うくらいの強さだった。
 周囲から、何駅か前から見ていたとおぼしき乗客たちのざわめきが聞こえる。
 唐突に起きだした彼女に驚いて、とっさに身動きができなくてやや引き気味の僕から彼女は視線を外さない。まるでこちらの方が悪いことをしているんじゃないかと思わせるくらいにじっと見られて、僕はわずかにたじろいだ。しかしそれでも彼女は視線を外さない。のみならず、すっとその顔が近づいて来た。
 もうその距離は5センチと離れていない。
 と、彼女はいきなり、こちらを見据えたままつぶやいた。 
 「馬鹿」
 「え?」
 少し怒ったような彼女の声に、僕の頭はめまぐるしく高速で動いた。
 馬鹿? 馬鹿なんていうくらいだから全くの他人、知らない人じゃないはず。
 しかし、、誰だろう? 僕が知っている人なのか? メイクが違うから気がついていないけれど友達? いや、そう考えたら辻褄があう。突然隣に座って眠りだしたり、一旦起きたのに人の肩に顔をすりつけて熟睡したりは知り合いならばあり得る。けれど、その距離のまま再び止まった彼女の顔を近くから見ても僕の中では彼女の顔を過去にしりあったどんな女の子とも照合できない。焦る。頭の中で目の前で静止している彼女の髪を高速でいろいろな髪型変えてみる。でも、合わない。心当たりが出ない。色も変えてみる。今目の前にいる彼女の髪の色はやや茶色い黒色だがそれを金色に、明るい茶色に、黒く変えてみる。それで頭の中のデータ検索にヒットは出てこない。彼女はほとんど瞬きしないままじっとまだこちらを見ている。距離も変わらず、下手に揺れたらキスしてしまうかも知れない距離で固まっている。
 どうすべきか、何か声をかけようかと思ったものの、「呆れた。思い出せないの?」と言われても困るし、さりとて全く知らない人であった場合、あまりにも間が抜けている。どうしようか。そう思った瞬間、またしても動いたのは彼女だった。ぱっと立ち上がるとかなりのスピードでその場を立ち去りかけた。と思いきや、また身を翻して今度は僕の耳元に唇を近づけ、囁くように早口で「ごめんね」と言い、今度こそはそのまま身を翻し隣の車両の方へと早足で歩み去った。
 僕が追いかけようかどうしようかと迷う間もなく、気がつけば電車はブレーキを踏んで駅へと滑り込んでいた。あわてて僕はホームへと降りたって、慌てて左のほう、彼女が向かっていった車両のほうを見たが、彼女が降りてくる気配はなかった。釈然としないまま僕は一歩離れ、ドアが閉まり、動き出した電車の窓から彼女の姿を探したが徐々に加速していく電車の中を見切ることは出来ず、電車は行ってしまった。
 残された僕は、まるで何かとんでもない失敗をしたかのような気持ちになりつつ、どんどん遠ざかる電車の後ろ姿を見続けていた。。。
 
 ということで、小説風にしてごまかしつつもわけがわからない事態はよりわけのわからない展開になっていったわけです。冷静になって考えてみても、どーしてもこの一件は釈然としないんですよね。いくつか解釈は成り立つんですが、どれもどうもしっくり来ないんですよ。
 まず解釈その1。彼女は実は本当は知り合いなのに僕が鈍感すぎて分からなかった。
 次に解釈その2。彼女は僕を誰かと勘違いしていた。
 解釈その3。彼女は罰ゲームかなにかで僕に接触した。
 解釈その4。TVのどっきりや、クイズ番組の撮影をやっていてリアクションが撮られていた。
 どうでしょう? どれも何か違和感がありませんか? 可能性としては解釈その1が一番ありがちですけれど、もしそうだとしたら僕は彼女にある程度好意的な感情をもたれていると思われるんだけれど、そうすると鈍感なことに怒ることは納得できても、彼女がそのままどこかに行ってしまったことが意味がわからなくなりまよね。次に解釈その2でいくと、勘違いして横で寝てて甘えていたにしても目が覚めてじっとこちらを見たあとの「馬鹿」がわからなくなるんですよね。立ち去るのは恥ずかしさのあまりとすればわからないでもないですが、「馬鹿」がわからない。
 で、発想をきりかえて出てきたのが解釈その3で、実は友達と罰ゲームか何かで接触してきたとすればわけのわからなさにも理解は生まれますが、最初に乗ってきたときとかその当時のまわりには彼女と知り合いらしい人物がいなかったし、罰ゲームにしては20分ばかりという接触時間の長さがわからないんですよね。同様に解釈その4も、もしそうだとしたらあとでネタばらしはあるだろうし、ほとんど受け身でリアクションらしいリアクションがないままに終了してしまったら面白みも何もないんだろうし、、、、と。わけがわからないんですよねぇ。
 僕の中ではあのどーするどーなる状態のオチとしては、僕がとりあえず彼女の肩をたたいて注意を促してから立って出て行く、或いはそのまま立ち上がったところに彼女はこてんと転がってそれでも寝ていたままだとかそういうような程度のことを想像していたんですが、この展開は予想外というより、頭を悩ます訳分からなさになってしまいました。事実は小説より奇なりとは言いますが、本当に奇妙な話です。
 結局、待ち合わせしていた女の子も忘れ物したとかで到着が遅くなったので映画は最終上映時間が終了。予定はぐだぐだに流れていって映画の予定も全然これが違う話になってしまい、映画が一転、車でスパゲティを食べに行く話になり、早めに寝る予定が明け方になり、結局この日はすべてが流れ流れて予定外の一日になってしまいました。
 あの女性は一体誰で、何でまたああいう行動に出たんでしょうねぇ。
 誰か、いい解釈が出来る人いません? 円紫師匠や、鳥井真一みたいな日常の謎をときあかす系の知り合いが欲しいと思う今日このごろです。