「御宿かわせみ」 平岩弓枝著
御宿かわせみ。巷では33巻の「小判商人」が発売されてそちらの方が話題でしょうけれど、自分はまだようやくと1巻に手をつけてみたところですので、こちらから順番に。
さて。主人公は、奉行所役人の弟「神林東吾」と、「かわせみ」という旅籠の女主人の「るい」の二人。彼ら二人が江戸の街を舞台にしてくりひろげる、人情話と捕物帳というのがこの「御宿かわせみ」の大枠の物語構造のようです(なんせあと32巻も既に続きがあるわけで途中からがらっと変わっているかも知れませんので)。
で、一読の感想ですが、まず特徴的だなと思ったのは、その一話ごとの短さ。短篇連作集的なものになるだろうとは思っていましたか、この一巻だけでも8話収録ということですから一話あたりに約30ページ。ここまで短い推理連作短篇というのはちょっとないですね。宇江佐真理や宮部みゆきでももっと長いです。すぱっと短く、それでいて余情はあるというのがこの平岩弓枝の特徴なのかもと思いながら読みすすめさせていただきました。
これは、主人公の東吾やるいが、どちらも部屋住みであったり女主人であったりということで上役の制約みたいなものがないことでの葛藤がないことや、かわせみの成り立ちやるいの立ち位置の設定がうまいために捕物帳・推理ものとしてもストーリー展開に無理がないところなど幾つかの要素があわさって成り立っているものですが、切り詰め方がうまくてさくさくと読めるものなのにも関わらず、それでいてふっと笑ったり苦笑したり寂しくなったり誰かにそばにいてほしくなったりと、こちらの感情を揺さぶって来ます。やはり売れるには売れるだけの理由があるのだなと改めて思った次第です。
蛇足ながら主人公達のキャラクターに魅力があるのは言うまでもありません。こだわらず、自由な心持ちで泰然としている東吾、元同心の娘であるけれど気さくで人の面倒見やおせっかいが過ぎるくらい人情深い、るい。この二人の物語、これからゆっくりと楽しみたいと思います。あと、新装版ということになっていて、旧版に若干の加筆訂正を入れているそうですが、そちらの変更点はわかりかねます。申し訳ない。
- 作者: 平岩弓枝
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2004/03/12
- メディア: 文庫
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