小説・漫画好きの感想ブログ

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「動物園の鳥」 坂木司著

 坂木司の「ひきこもり探偵」シリーズ三部作の完結編です。
 すごく気にいっただけに、読むのがなんだか勿体ないと我慢してみましたが、どうしても最後の結末がどうなるのか読みたくて読んでしまいました。このシリーズ、主人公の坂木とひきこもりの鳥井との少し共依存めいた関係がすごく特徴的で印象的でした。その関係は、物語が進み巻が進むにつれて、事件を通して少しずつ知人の和が広がってくにつれて薄れていきはしました。日常の謎を二人によって解決してもらった人物たちが、友達となって彼らのそばの輪を広げていったからです。
 二人だけの閉じた関係が終わりに向かっている。読む人にとっては、ある意味それは心温まる、回復の物語でもあったわけです。が、二人にとっては、その関係の終わり方によっては、取り返しのつかない事になってしまうか知れない危険をもはらんでおり、自分はそのあたりにドキドキしながら物語を読み継いでおりました。特に、この最終巻では鳥井のひきこもりの原因になった人物までが登場するとあって、本当にドキドキしました。
 結論はまぁ、心温まるこのシリーズのことですから皆さんの予想の通りのわけですが、すごく心に傷を負った二人だっただけにどうなることかと最後の最後までどきどきしましたし、最後のシーンには思わず坂木のように滂沱の涙を流しそうになりました。
 さて、この最終巻、ファンにとっては嬉しいことに、作中で鳥井が取り寄せていたお菓子のお取り寄せ先や、鳥井が作っていた料理のレシピが巻末のおまけで載せられています。これだけサービス精神でこられた以上、読み手のこちらもいくつかは実際に作ってみたり、お取り寄せしてみて、誰かと自分も楽しい食卓の記憶を作ってみたいななんて思いました。
 三部作、すべてお勧めです。

動物園の鳥 (創元推理文庫)

動物園の鳥 (創元推理文庫)