小説・漫画好きの感想ブログ

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「機械どもの荒野 メタルダム」 森岡浩之著

 「星界の紋章」や「星界の戦旗」で有名な森岡氏のSF作品です。最新刊かと思いきや、まったく知りませんでしたが、今回のは文庫のレーベルを変えての復刊(いまはなきソノラマ文庫から)という位置づけだったようです。
 さて、この作品、ジャンルとしては近未来を舞台にしたハードSFとなります。
 この作品世界の中の人類は、機械達の叛乱にあい、自機械文明を維持することが出来なくなっています。彼らは、意志をもった機械たちが自走し動き回る「荒野」を中心に、その周囲でほそぼそと暮らしています。彼らは、「狩人」と呼ばれる機械相手のハンターたちが、機械の獣たちを倒してもちかえってくるパーツを使って自分たちの文明を支えています。主人公のタケルもそんなハンターの一人で、彼がある日「話す」機械と出会うことで物語が始まります。
 彼らの世界においても「話す」機械は彼らの歴史に存在しておらず、タケルは戸惑いつつも「チャル」と名付けたその機械を捕獲します。そして、「チャル」は捕獲され、解体されながらも、タケルに自分は機械の女王からの使者だと伝え、思いがけない提案を彼にします。
 その提案と結末は読んでみてのお楽しみですが、非常にテンポよく進んでいくのできっとさくさくと楽しく読んでいけると思います。読んでいて思い出しましたが、森岡さんはかけあいの会話が非常に楽しい作家さんで、この作品でも主人公のタケルと、彼の幼なじみで電脳調教師の鴉、花屋兼ジャンク屋のカーシャ、そして機械の「チャル」の各キャラクターたちの掛け合いがとても楽しくてどんどん読み進めてしまいました。アイデアはホーガンの「造物主の掟」などと同根のものですが、こちらの方があっさりとしていて読みやすく、それでいて最後の結末は意外と重いそれでした。この結末は、語り口に騙されていますが結構重く、こういう楽しいタッチでなければ逆に重くなりすぎていたものかもしれません。外見やプロットのシンブルさ、語り口の軽妙さはソフトなんですが、中身はやっぱりけっこうハードなSFでした。

機械どもの荒野(メタルダム) (ハヤカワ文庫JA)

機械どもの荒野(メタルダム) (ハヤカワ文庫JA)