小説・漫画好きの感想ブログ

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「なぜ南極の魚は凍らないのか?」 白石拓著 

 不思議な生き物達の不思議な生体の本です。
 実は自分、結構こういう変わった動物の不思議な生態が好きで、それが虫であろうとほ乳類であろうと魚類であっても面白かったり興味深かったりすると時間を忘れて読んでしまいます。雑学の本とかも好きですけれど、生き物の場合はその生き物が現に地球に住んで暮らしているという事実がある点で、雑学の本以上に興味深く読んじゃいます。なので、この本も、一般のレベルでみると、書き方が淡白でもっと興味深く書けるのにということを考えると平均点くらいしかないと思うのですが、個人的な好みでけっこうじっくりと好評価で読みました。たぶん生き物に興味のない人にはまったく面白くない本だと思いますので、そのあたりはご容赦。
 この本の中で一番興味深かったのはサムライアリというアリの生態。このサムライアリというのは世にも不思議なアリで、他の種類のアリを奴隷アリとして使わないことには、自分たちだけでは巣も作れず子供も育てられないという特殊なアリたち。ただ、そういう奴隷がいなければ巣も作れないとなると、どうやって繁殖して暮らしていくのか、自分のコロニーを作るのかというと
、これが非常にえげつないんです。サムライアリの若い女王は自分の羽を切り落として、単身別の種類のアリの巣へと赴くのです。そこに立ちはだかる別種族の働きアリや軍隊アリを殺しながら進み、その巣の女王アリをかみ殺して、自分がそのアリの巣の女王となるのです。もちろん、そのアリの巣のアリたちからしたら他の種族のアリなんですが、女王同士の戦いの中で体表のワックス成分を擦りとり、他のアリたちに味方の新しい女王として認識させるのです。あとは、ひたすら自分の子供たち、つまりサムライアリの赤ん坊を生み続けます。すると、もともとの巣のもちぬしのアリたちは勘違いしたまま、せっせと彼らを育て、エサを運び、巣を拡大し続けます。増え続けるサムライアリはその恩恵に浴して増えるのみ。いつしかもともとの種族のアリ達は女王アリがいないので死に絶えていきます。その時点で巣の乗っ取りが完成する、というのです。なんともはや凄い話ですが、こういう話がごろごろ転がっているのがこの本です。
 

なぜ南極の魚は凍らないのか!? (宝島社文庫 611)

なぜ南極の魚は凍らないのか!? (宝島社文庫 611)