小説・漫画好きの感想ブログ

小説・漫画好きの感想ブログ

「白桐ノ夢」 佐伯泰英著

 居眠り磐音江戸双紙シリーズの第25弾。最新作です。
 佐々木家の養子となって道場の若先生となった磐音。おこんとの婚儀も終わり、平安な日々が訪れるかと見えた彼でしたが、風雲の風は根この巻でも彼を放っておいてはくれません。日光参内で縁を結んだ次期将軍家基のもとに秘密の約束物(下町の鰻料理)を届けに赴いた彼は、そこで不思議な気配を感じます。家基を遠巻きに見ている不思議な忍びの気配は、政敵の田沼意次の再びの蠢動なのかそれともまた別の第三勢力なのか。休む間もなく彼は再び剣を振るう事になります。。。
 ということで、あいもかわらず事件に巻き込まれる佐々木磐音とその周囲の物語です。
 シリーズももう25巻となって、いい意味でマンネリになっているこのシリーズですが今回も磐音の強さが絶対に近いこともあって、いろいろな事があるわりにはハラハラドキドキなしで読み進んでいってしまい、興味はむしろ、シリーズの中での登場人物たちの成長物語的な部分のほうにいってしまいました。数巻前に今津屋に奉公にでたおそめのその後や、門弟達の剣の修行の進展具合。何より、佐々木磐音がまだ坂崎磐音として、用心棒稼業をしていた頃の友達の竹村武佐衛門のその後と人情話には長い物語だけがもつカタルシスがあって、ネタバレになるので避けますがその武佐衛門との事で磐音が自分を恥じるシーンなどは結構ぐっときました。それでこそ磐音だ、とファンは皆思ったことだと思います。どこまで立身出世したりお金に困ることがなくなっても、いつまでも下町のときの気持ちを忘れない彼であってこそ、この物語をずっと読んでいきたいとファンは皆思っていると思います。
 そういう意味で、きっちり裏切ることのない一冊でした。

白桐ノ夢 ─ 居眠り磐音江戸双紙 25 (双葉文庫)

白桐ノ夢 ─ 居眠り磐音江戸双紙 25 (双葉文庫)