小説・漫画好きの感想ブログ

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「機械たちの時間」 神林長平

 ハードSFです。
 「七胴落とし」「敵は海賊」シリーズや、「戦闘妖精・雪風」「永久機関装置」などで有名な神林長平さんの復刻版です。単行本の初出は1987年ということですから31年前の作品です。
 主人公の邑谷武は、頭脳にコンピューターチップのTIPを積み込んだ人間と機械のハイブリッドソルジャー。彼は火星の知性生命体マグザットとの戦いに選ばれた火星生まれの特殊兵団の戦士だった、はず。しかし、気がつけば彼は1976年の新潟でしがないコンピューター技師になっていた。これは現実ではない、俺はハイブリッドソルジャーだったはず。二つの記憶を持ちながら生きる彼のもとに、軍での友人の中条からの連絡が入る。彼は、彼より未来、2131年の新潟にいるという。やはりマグザットとの戦いは続いており、彼の肉体は遠い火星にあり、今ここで見ている世界はかりそめの疑似空間に過ぎないのだと感じた刹那、マグザットの攻撃が始まる。時空を超え、友を探し、追ってくる何か、マグザットかそれとも別の何かか得体の知れない何かと戦い続ける武。彼は敵と戦ううちに、自分と戦う敵の正体に気づく。
 というようなストーリーのハードSFなんですが、いかんせんちょっと古い。
 大本のネタ自体は別に古いネタでもないんだけれど、途中の戦闘シーンや、機械生命体やコンピュータ内部での電脳世界(という自分の言いかたがまた死語くらい古いんだけれど)での描写が、30年前なら斬新だったのだろうけれど今読むとあまりにありきたりな感じがしてちょっと冷めてしまいました。ネタバレしちゃうから書けないんだけれど、機械知性の始まりと人類意識の始まりの関係性っていうテーマはあまり他にないんだけに、そこがきれいにすきっともっとまとまったら、或いは、今著者が同じネタで小説を書いたらもっと凄いものが出来るだろうなぁと思うだけに残念です。
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機械たちの時間 (ハヤカワ文庫 JA (532))

機械たちの時間 (ハヤカワ文庫 JA (532))