小説・漫画好きの感想ブログ

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「鬼」 綱淵謙錠著

 
 会津藩を舞台にした当時の説話集というか異聞集の「老翁茶話」という本を下敷きにした短篇の時代物です。
 三十年くらい前の本で、まったく不勉強で読んだことがなかった人の本なんですが、けっこう楽しんで読めました。宇治拾遺物語とかそういうのを読んでいるときの感覚というのでしょうか、時間の流れ方が少し違う時間に紛れ込んだような感じがします。ただ、欲をいえば、物語の描写がわりあいに淡々としすぎていたので、いまどきの本読みとしてはもうちょっと描写の妙だったり文章の見事さというのを感じたかったです。
 狐や蛇を題材にした怪異話と、当時の人斬り(この人は実在の人物です)の話などが、ほどよい長さで六編入っています。

鬼(き) (中公文庫)

鬼(き) (中公文庫)