小説・漫画好きの感想ブログ

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「騙し屋ジョニー 魔界都市」 菊地秀行著 

 本年81冊目の紹介本は、ひさしぶりの魔界都市<新宿>ものです。
 魔界都市<新宿>は、ソノラマ文庫から出ていた菊地秀行のデビュー作であり、氏の原点です。が、その正統派の魔界都市<新宿>は、デビュー作の魔界都市<新宿>と二冊目の空中庭園をテーマにした作品を最期に作品の発表はなく、その後は同じ「魔界都市」の新宿という場所を借りてのマンサーチャー「秋せつら」を主人公にしたシリーズ、魔界医師のメフィストを主人公にした「ドクター・メフィスト」シリーズ、新宿のガイドを主人公にした魔界都市リポートのシリーズなどスピンオフ作品ばかりでした。
 著者の菊地秀行氏本人があとがきに書いていますが、今の彼の作風や作品世界の雰囲気と、このデビュー作の主人公の雰囲気があまりに違うので続けていくには無理があったからです。そして、それはやはり今でも解消されているようには見えません。これも氏があとがきで書いているように確かに主人公の十六夜京也も、ヒロインの羅魔さやかも、どちらも魔界都市になじませる為に性格が変えられていますが、それでもちょっと彼が書く今現在の作品世界のシリーズの主人公としては物足りない感じになってしまっていて無理があります。正直に言って、他のシリーズ作品と並べられると一段落ちる感じがしてしまいました。
 なので、他シリーズでは神に近い能力を持つメフィストがちっちゃな嫉妬心でしでかす事や他者が彼に近い医学的能力を出してしまう事も含めて、この魔界都市新宿は、他のシリーズの魔界都市新宿とは別物、もしくはパラレルで関連性はないものとして読む方が作者にとっても読者にとっても幸せな気がします。
 タイトルの騙し屋ジョニーだけは、今までの氏のパターンにないキャラクターで面白かったですけれど、でも、作品全体としてはやっぱり評価が下になってしまいます。という事でお勧め度は5の3です。

騙し屋ジョニー 魔界都市〈新宿〉 (ソノラマノベルス)

騙し屋ジョニー 魔界都市〈新宿〉 (ソノラマノベルス)


追記:個人的に今一番読みたい菊地秀行のシリーズは、同じ念法使いでも妖魔シリーズの方かなぁ。ただし、あちらも表紙ではかっこよく描かれていますが、著者本人の記述によると「西川のりお」に似ているという話だったような^^