小説・漫画好きの感想ブログ

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「水滸伝 巻ノ十八 乾坤の章」 北方謙三著 

 北方水滸伝、文庫版最新刊。次巻19巻が最終巻になりますので、この18巻は最終巻へ続く一巻です。
 まぁ、ここまでくると読んでいるのはもうどっぷりと思い入れがある人ばかりになると思うのですが、自分的にはこの一巻はどうにもしっくりこなかったです。二、三巻くらい前から主人公といってもいいくらいの主要メンバーが次々と死んでいってはいるのですが、この巻でも五本の指に入る将軍達がどんどんと死んでしまいます。ネタバレになっちゃいますが、将軍格では秦明と林沖が死んでしまいます。この二人は、作品全体を通じても最強に近い、特に林沖は個人戦ならダントツの強さを誇っていたし(イメージでいえば三国志張飛関羽レベルだす)、物語の冒頭から出ずっぱりだっただけに、本来ならこの二人の死はかなり大きな節目になるはずなんです。ですが、死に方がちょっと唐突だし、見せ場というか散り方があまりにも普通だったために、なんだか唐突な感じがして、(あくまで個人的な希望でいえば)もっと見せ場というか盛り上がった形での最期を用意してあげて欲しかったなというのがあります。
 楊志の息子の楊令が、その二人とは対照的にいきなり戦いの場に出て来て大活躍してしまうだけに余計にそう思ったのかも知れませんが、少し不憫な感じがしました。もちろん、水滸伝という物語の終末が中国の原作の通りの結末になるのなら、登場人物の最終的な運命がどうなるのか、梁山泊とその戦いが結局はどうなるのかは既にわかってしまっているわけで、そういう事でいえば予定された通りなんでしょうけれど、でもなんだか寂しい感じでした。勿論、そんなことを言い出せば、梁山泊の百八の英雄達のどれもの命の価値は同じでこの二人だけが特別ではないのですけれど。
 ともあれ、いよいよ次巻でこの長い長い物語も終わりです。果たして、北方版の「水滸伝」はどういう結末を迎えるのでしょうか。

水滸伝 18 乾坤の章 (集英社文庫)

水滸伝 18 乾坤の章 (集英社文庫)