小説・漫画好きの感想ブログ

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「石の猿(下)」 ジェフリー・ディーヴァー著

 上巻で、中国からの難民を多数引き連れて来た蛇頭のボス・ゴーストがアメリカ大陸に無事潜入。うまく逃げ延びた難民を殺すべく異常なまでの執念を燃やすゴーストたちと、四肢麻痺患者ながらも頭脳戦で彼を追いつめるリンカーン・ライムと、サックスの戦いは激しさを増したまま下巻にもつれ込んできました。
 この下巻でも、ディーヴァーらしい二転三転のプロットを繰り返しながら戦いは続きます。が、今作の一番の収穫は、敵のゴーストでもなければ、サックスの活躍でもなく、ソニー・リーという主役を喰ってしまった中国の公安刑事の存在でしょう。彼は、難民のふりをしてゴーストを追いつめるべく船に潜入していたのですが、そのままアメリカに辿り着きライムたちと行動をともにします。そして、その過程で中国人ならではの着眼点、考え方、捜査手法で、ライムにまけず劣らずの優秀さを見せます。そして、あるがままに人生を受け入れる姿勢で、ここまでとても頑で恋人のサックスですら変えられなかったライムの心の中の何かを変えてくれます。
 ある意味、今迄のシリーズの中で一番重要なサブキャラとなっています。
 また、そのリーに応える形で常にはない行動をとるライムが、シリーズをずっと読み続けてきたものにとっては嬉しかったです。よくよく振り返れば、敵は切れ者そうでいてちょっと抜けていたり、アクションや騙し合いも上巻のほうが勢いはあった今作ですが、リーとライムのやりとりの部分だけでかなり満足度が高かったです。
 タイトルの「石の猿」はもちろん孫悟空のことですが、それを示してのリーの言葉がよかったです。

石の猿〈下〉 (文春文庫)

石の猿〈下〉 (文春文庫)