「犬はどこだ」 米澤穂信著
最近自分の中で人気急上昇中の米澤穂信の文庫最新作です。
今までの米澤作品は主人公が中学生・高校生・大学生くらいの割合と若い層で、内容的にも青春小説といっていいほどの瑞々しさが全編に漂っていました。それが、本作はソフトとはいえ「探偵」が主人公のハードボイルドですからがらりと路線が違います。まぁ、「犬探し」を主体にした探偵事務所をひらこうとしているあたり、普通のハードボイルドではないですが、それでも、ある意味、米澤んさの本では主人公が学生でないというだけでも大きな路線変更です。
また内容の方も、二つの関係なさそうな事件(まぁ、これは探偵助手がしっかりしていれば最初から一つの事件として認識されるわけですが)が一つに重なっていく展開であるとか、一冊で一冊の長編であるとか、彼にしてはいろいろと新機軸を試しておられます。
結果としては、それが成功しており、個人的にはこの路線でも(青春小説はそれはそれでまた書き続けて欲しい)たくさんの小説を書いて欲しいなと思いました。
ストーリーは、主人公の紺屋一郎が探偵事務所を開設するところから始まります。彼は、犬探し専門の探偵事務所を開いたつもりだったのですが、広告をうったりする前に、知り合いからの紹介の依頼が「失踪した女性の捜索」「村に伝わる古文書の由来調査」という全く別のものになってしまいつつも成り行きでそれを受け入れます。主人公の紺屋は、社会生活からドロップアウトしてしまった自分の社会復帰のために始めた探偵稼業なので、それほどこだわりがないのです。しかし、この二つの事件が思いの他シリアスな展開となっていき、最期の最期には米澤さん得意の大推理が始まり、予想外のどんでん返しのある本格ミステリとなっています。
感触は丁寧に作り込まれたお菓子のようですが、中身はけっこう本格。ちょっと違いますが、方向的には、北村薫とか加納朋子とかああいう感じの丁寧なミステリ作品です。
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- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2008/02
- メディア: 文庫
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追記:「犬はどこだ」ときいて「医者はどこだ」を連想するあたりが我ながら年を感じます。