小説・漫画好きの感想ブログ

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「ミミズクと夜の王」 紅玉いづき著 

 第13回電撃小説大賞、大賞受賞作品です。
 さて、自分は心のどこかでライトノベルを甘く見ている部分がありましたが、素直に脱帽。
 感動しました!
時雨沢恵一さんの「キノの旅」とか菊地秀行さんの「D」シリーズとか岩本隆雄さんの「星虫」とか、乙一さんの「さみしさの周波数」とか傑作もたくさんあるのにも関わらず、どこかで軽く読んでみようという立ち位置で読んでみたのですが、いや、かなり感動しました。
 筋立てはいたってシンプル、早い話が魔物の王様と人間の少女の純愛物です。まっすぐ直球勝負の愛の物語です。言葉も平易で、昔話風の細かいディテールは脇においておいて展開される物語は、人によってはプロット段階の完成度、細部の作り込みが甘い、ご都合主義、少女漫画趣味すぎるというかも知れません。確かに小説の作法や技術でいえば、もっと洗練されていて素晴らしい作品が多々あります。が、著者があとがきで書いているように、「使い捨てでいい、通過点でいい(中略)ただ、その一瞬だけ心を動かすもの」が書ければいいと書いていますが、そういう意味ではこの小説はまさにど真ん中を振り抜いています。
 あまあまでべたべたの恋愛もの。けれど、それが妙に心地いいです。
 登場人物それぞれの成長物語も入っているものの、大前提として直球ど真ん中の恋愛小説ですから、恋愛小説がダメな人にとってはまったくハズレかも知れませんが、そうでないならお勧めしたいです。最初の出だしあたりは、ちょっと頭の弱い女の子のキャラがたちすぎていて慣れるまで戸惑うかも知れませんが、そこを越えたらぐっとはまる筈です。
 図書館戦争シリーズの有川浩さんが大絶賛して、彼も泣いたそうです。オジサンになっても泣ける本です。
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ミミズクと夜の王 (電撃文庫)

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