小説・漫画好きの感想ブログ

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「グインサーガ119巻 ランドックの刻印」 栗本薫著

 グイン・サーガ最新刊です。
 冒頭からネタバレになってしまいますが、この巻でグインは以前の記憶を取り戻します。
 パロでのアモンとの戦いと転送装置絡みの事故で失った記憶を、この巻でグインは取り戻します。思えば、かなり長い期間グインは記憶を失い、己は何者なのか、どういう存在なのか、ということに絶えず悩んできましたが、それもある意味解消されます。この自分が何者であるかという話は、栗本薫の小説の主人公たち全員が抱えるテーマで、彼や魔界水滸伝の安西雄介などはそれ自体をエネルギーにかえていたような節もありますし(このあたりの転生や次元を越えて同じ役割を振られるのはマイケル・ムアコックの永遠のチャンピオンシリーズのようで興味深かったのですが)、そこの背後に絡んでくるランドックと彼の関係が今回はちらりと垣間見えてなかなか面白かったです。  
 唯一気になったのは、ヨナの中では、ミロク教徒であることと学問の徒であることがのバランスをどう取っているんだろうという事ですが、それもまぁ物語の面白さの前では瑕疵にはならないでしょう。
 ともあれ、これで古代機械の謎はもう少し後にまわしつつも、中原世界全体を巻き込んだ興亡物語に話は戻りそうで、スーティのことも含めて、今後の展開が非常に楽しみです。一時は盛り下がっていたグインサーガですが、かなり冗舌すぎる回り道だったタイス編のラストあたりから、一気にその面白さを取り戻したような感じがして、本当に先が楽しみです。
 これであとは、栗本薫さんの胆管癌の手術がうまくいって術後の経過がよいように祈るばかりです。