小説・漫画好きの感想ブログ

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「ブラッドハーレーの馬車」 沙村広明著

 
 「無限の住人」の沙村広明さんのコミック最新刊です。
 少女歌劇団のお話ということで手にとってみましたが、えー、かなり猟奇的趣味に満ちあふれた作品です。前半部分なんかは強烈に18禁でした。ただ、あとで書きますが中盤からはそのあたりが影を潜め、違う話になります。
 あらすじとしては、こんな感じ。
 ブラッドハーレー少女歌劇団。そこに見いだされ、ブラッドハーレー家の養女になることは少女たちにとって憧れの一語につきました。特に孤児院の少女たちにとっては、毎年一人だけ選ばれるその養女に選ばれることは、美貌への賞賛であり、成功への約束手形でもあり、なによりも華やかな生活と直結した切符であり、絶対的な幸せと同義語でした。誰かが選ばれ、ブラッドハーレーからの迎えの馬車に乗って孤児院を出て行くとき、そこに乗るものは幸せの絶頂であり、残ったものは羨望に満ちた目でそれを見送りました。
 しかし、現実には馬車に乗せられた孤児院の娘たちのほんの一握りのもの以外は、実はそのまま何もわからないうちに各地にある監獄に送られていくのでした。少女たちは、実は監獄に服役する重犯罪者で無期懲役の服役者・死刑囚たちへの生け贄に使われることになっていたのです。一つの刑務所に一人ずつ、何もわからないまま、下着一枚で獄舎に放り込まれる少女たちは、何十人もの男たちの慰みものにされるのです。
 性欲のはけ口というだけでなく、彼らの破壊衝動、嗜虐衝動を抑えるために投げ与えられる少女は、暴行につぐ暴行や純粋な暴力のために数日ともたずに確実に死にます。また数日運良く生き残れてもその先には何もありません。まぁ、本当にひどい話です。
 そんなわけで、たぶん沙村さんは最初バリバリにきつい18禁路線をやりたかったんだろうなぁと思うのですが、そういう描写が酷かったのは最初の二話のみで、あとはそういうシチュエーションの中での囚人たちの中の人間性の話や、ヒューマンもの、悲恋もの、ミステリになっていって、最後の最後のほうではやっていることはひどいのになんだか奇麗にまとまってしまいます。つまり、当初方針とは全然違うものになってしまいます。が、個人的にはそちらのほうが好きなので、良かったです。
 まぁ、とはいえ最初の二話のインパクトが強いので万人にお勧めではありません。特に絵がうまいひとなので、妙に生々しいです。そういうの嫌いな人は絶対に見ない方がいいです。でも、そうでなければ、沙村さんらしいタッチでなおかつバラエティ溢れた作品だと思います。

ブラッドハーレーの馬車 (Fx COMICS)

ブラッドハーレーの馬車 (Fx COMICS)