小説・漫画好きの感想ブログ

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「グルメ警部キュッパー」フランク・シェッツイング著

 グルメもののミステリです。
 たぶん、このシェッツィング、邦訳は初めてされる方ですが本国ドイツではベストセラー作家さんであるとか。そういう予備知識なしに、グルメな警部が大活躍する本ということで食いしん坊でミステリ好きな自分は手にとってみたんですが、、、ちょっと中途半端な感じでした。
 実際にシェッツィングが住んでいるケルン(ローマ帝国の退役軍人が入植して築いた都市として、また大聖堂があることで有名)を舞台にしたミステリなんですが、たぶん土地っ子が読むとすごく面白いんだと思うけれど、行ったことやイメージが湧かない人からすると普通のミステリで、あとはその主人公のキュッパー警部のキャラがよく出来ていないと厳しいんだけれど実はそのキャラ造詣がちょっと弱い。
 グルメで料理に関するこだわりがすごくありそうな紹介だったけれど、これくらいのレベルならそのあたりに掃いて捨てるほどいそうで、グルメ警部というにはちょっと物足りない。これならば、ご当地+美食グルメの探偵・刑事ということでいえば、シチリアのモンタルバーノ警部、アメリカのネロ・ウルフ、日本の高野聖也のほうが圧倒的にキャラがたっていてプロットも強いです。 
 ただ、そこはかとなく漂うユーモアという点では、奇抜な登場人物たちも勘定にいれるとけっこういい味を出しているかも知れません。物語冒頭で殺されるインカという大富豪の妻、彼女は性格も極悪だけれど男達を虜にしないではおかない極めつきの人物。その主人と影武者のフリッツとハルトマン。インカの娘で、虎の飼育係のマリオン。彼女の恋人でたえず宇宙からの電波でライフスタイルを変えるバンドマン。どれも一風変わっています。まぁ、主人公のキュッパー警部からして、母親の死を告げにいった相手にビンタを食らわされて何故か娘のような年の女の子に心惹かれたりするのだから、この世界の基準では普通科もしれませんが、そのあたりのへんてこな感じもユーモアとして取ればいい雰囲気かも知れません(キュッパーという名前もなんかユーモラスといえばユーモラスかも)。
 ただし、ミステリとしてのプロットはわりと単純すぎるのと、ミスリードさせる材料のつめこみすぎはバランスが悪いんじゃないかなと思います。もう少しバランスよく入れば評価は変わったかもしれません。 
 評価は5の3。次回本訳本に期待です。
 

グルメ警部キュッパー (ランダムハウス講談社文庫)

グルメ警部キュッパー (ランダムハウス講談社文庫)