小説・漫画好きの感想ブログ

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「瑠璃の契り」 北森鴻著

 
 今年37冊目の紹介本です(ときどき書いておかないと忘れるので)
 冬の狐こと、骨董旗師の冬狐堂の女主人、宇佐見陶子のシリーズ文庫最新作です(シリーズの長編は講談社から「狐罠」「狐闇」と文庫でも出ています。こちらの文春文庫の方は短編連作集ですが、主人公などは同じなので同一シリーズとして取り扱うほうがいいでしょう)。
 骨董の世界において、自らの店舗を持たず、競り市や地方の倉等から己れの「目利き」を頼りに骨董品を仕入れまた別の業者や客に転売することで成り立つ旗師は、常に商品をまわし続けること、またおかしな商品を仕入れたり売らないことで信用を勝ち得続けなければならない過酷な職業。ましてや普通の業界と違って、お互いがお互いを騙そうとしたり、出自自体がわからない品が行き来する暗い世界。 
 そんな中で生きる陶子も、いつしか目利きとして名が売れていきます。 
 それだけに時には腕を試され、はめられそうになる時もあります。この作品でも、彼女は目利きであるが故に逆にそうした罠にはまり危地に陥るのですが、、、果たして彼女はその危地を脱することができるのか。
 本作には「倣雛心中」「苦い狐」「瑠璃の誓い」「黒髪のクピド」と四つの短編が収められていますがどれも秀逸です。なかなかに厳しく張りつめた展開の作品が多く、息をつめて読んでしまいますが、それも心地よい疲れです。本作では友人の横尾硝子が、事件の中であるときはワトスンとして、あるときはパートナーとして、あるときは事件の当事者の一人として大きく絡んできますが、そのときどきの二人の会話やお互いへの気遣いや連帯が非常に強く描かれていてそのあたりも読みどころの一つでしょう。 
 おすすめできる一冊です。5の4です。
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瑠璃の契り―旗師・冬狐堂 (文春文庫)

瑠璃の契り―旗師・冬狐堂 (文春文庫)