小説・漫画好きの感想ブログ

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「在日」 姜尚中著

 こんばんは、樽井です。
 今日はちょっと重たい本の御紹介になります。
 著者は姜尚中氏。朝まで生テレビなどで活躍している論客の一人で、名前から察せられるように在日韓国人の二世です。実は、朝まで生テレビの論客というかコメンテーターの中で自分が一番好きな人で(というのも彼は常に声を荒げず、きちんと自分の意見を確認を取りながら発言し、その言い方も「いいですか、つまり、問題はね・・」とあくまで理知的。あの声がでかい奴が勝つという感じの時に低レベル過ぎる論争の中で彼にだけは常に理知の光が射しているように見えるのですよ)、それで今回この本を手に取ってみたわけですが、はっきりいってかなりショックを受けました。何にショックを受けたかというと、自分があまりに歴史に無知であったり、彼らの生活に関して想像力を欠いていたかという事実にです。
 自分は、「在日」の人たちの事について、ある程度は知識があるつもりでした。彼が在日韓国人だという事も知っていたし、自分自身も仕事の同僚として何人かの在日の人たちと知り合いではあるから、それこそある程度は事前知識があるつもりでいました。しかし、この本を読んで本当にショックを受けました。
 在日の話は遠い過去の話でなく、彼らの父祖の代、日本の戦前から連綿と続く歴史で、ステレオタイプの双方の激しい罵倒合戦の裏に厳しい現実があることがよく分かりました。特に、日本を選んで日本に渡り、戦後も日本に残る道を選んでその中で苦悩しつつも祖国統一、平和を望んだ人たちの生き方考え方がよく分かりました。現実世界でもそうだし、ネット世界では特に顕著ですが、最近の世の中の流れは、日本と韓国・北朝鮮はお互いに口を極めてののしり合う一部の人たちのおかげで非常に険悪になり、それ以外の人も越えがたい認識の壁ともどかしさに頭を抱えている状態です。が、その中で在日の人が(というのが言い過ぎであれば、在日の一部の人たちが)何を考え、どういうことを思って、北朝鮮や韓国とかかわっているのかがこの本を読んで分かりました。
 もちろん、この本の著者である姜さんだけが特例のようなもので、それ以外の人は彼の考え方と著しく違うかも知れません。彼は、特殊、なのかも知れません。しかし、もしそうであるとしても、彼の思想や思考のバックボーンにある事実、歴史をこの本は教えてくれました。
 二世として生きる彼らの内面、悩み、祖国への想い。北朝鮮と韓国の政治への想い。
 彼らにとって生まれ故郷である日本に対する想い。  
 日本を意味もなく悪く言ったり歴史をどちらの側によいようにも曲げないたんたんとした事実の積み重ねは素直にうなづけますし、国際社会から見た世界の中の韓国と北朝鮮の歴史と現状からの願いはストレートに響きます。どうして太陽政策を取り続けたのか、太陽政策がたとえ打算とお金で計算されたスケジュールになったとしてもそれでもなおやり遂げないといけないと考えるのか。しかしそれらが今の若い世代を中心にどうして受け入れられないのか。日本人ではわからない事がそこにはありました。
 是非読んでみて欲しいと思う一冊です。
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在日 (集英社文庫 か 48-1)

在日 (集英社文庫 か 48-1)