「髪結い伊左次捕物余話 君を乗せる舟」 宇江佐真理著
エイリアンVSプレデター(最近、これの第二弾も出ていましたね)の映画を見ながら打ち込んでいます。
予想以上の凄まじい戦いですね。エイリアン1ではエイリアン一匹がおそろしく無敵でしたが、この作品では群生の中の一匹という感じでパワーダウンしてましたがそれでも凄まじいものです。
さて。
「髪結い伊左次捕物余話 君を乗せる舟」 宇江佐真理著
自分の好みからするとちょっと切れが悪い作品が続いたので、好きなシリーズの文庫最新刊から一冊。
この本は、「髪結い伊左次捕物帳余話」とあるように、主人公の伊左次が南町奉行所同心の小物として働く姿とその生活が描かれた作品です。同心でも岡っ引きでもなく、更にその下の下っぴきということで、普段の伊佐次は廻り髪結いという、店を持たない髪結い職人をしながら情報収集をしています。そしてことがあれば、彼を使っている不破という同心の手助けをすべく働きます。
今回もそんなわけで、上司の不破に頼まれて、一風堂という刀剣商の元に持ち込まれた刀からあたりをつけた、とある武家屋敷に住む女中の手に幕府禁制の刀がないかどうか探ってくる御用を言いつけられたりします。これがこのシリーズの話にしては珍しいちょっと怪異譚めいた話ではあったりするのですが、それはまた読んでのお楽しみ。
さて。このシリーズの醍醐味は、そうした捕物帳としての時代ミステリとしてのそのものずばりの楽しみ方もさることながら、それ以上に「余話」の部分の主人公伊左次や、彼の妻となったお文という芸者とのやりとり、上司の不破の家族の物語など、それ以外の人間同士の関係を時の流れの中で描いていくところです。これが人情話としてとてもよく出来ていて、時に伊左次に、ときに不破の妻に感情移入しながら読んでしまいます。単に面白いだけでなく、人の世の不条理や、やるせないことまでしっかり描かれています。
今回もその部分が非常に強く出ていて、主人公の息子(といってもまだまだ赤ちゃん)の話や、不破の息子が元服して奉行所に見習いとして勤め始め、同期の見習いたちと成長して行く姿などが前面に出て来ています。逆に前に出過ぎてしまって、肝心の主人公の伊左次の活躍や冒険がさきに挙げた「妖刀」一本だけなのが寂しかったくらいです。
内容や筆力的にはもはや文句のつけようのないレベルの方なので、そこには文句のつけようもありませんので、あとは伊左次がばりっと活躍する話を次はお願いしたいとただそれだけです。
.
- 作者: 宇江佐真理
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/01/10
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 20回
- この商品を含むブログ (18件) を見る
追記 今月はいろいろ文庫で手にいれておきたい本が目白押しです。なので、次のような本が今後紹介に出てくると思います。「ふしぎな図書館」村上春樹。「蓮丈那智フィールドファイル3」と「瑠璃の契り 旗師・冬狐堂」北森鴻。「水滸伝」16北方謙三。「名短篇、ここにあり」北村薫。「魔法の国ザンス」18巻、ピアズ・アンソニィ著。「在日」姜尚中。「陰陽師 瘤取り晴明」夢枕獏。