「まひるの月を追いかけて」 恩田陸著
「月の裏側」に続く恩田陸作品の御紹介です。
去年の5月頃に文庫で出た作品なんですが、、、もどかしかったです。
主人公は、渡辺静。バツイチの女性。彼女のもとに、異母兄の恋人、君原優佳利から連絡がかかってきます。異母兄である渡辺研吾が失踪したというのだ。手がかりは、彼女のもとに送られてきた奈良・明日香で取ったとおぼしき写真。実は研吾がそこをかつて仕事で旅していたという事はわかっていたのです。
そこで優佳利は、静とともに奈良路の移籍や寺社周りのを旅し、研吾を見つけようと誘って来たのです。たまたまリフレッシュ休暇であった静は半ば呆然としながらも、半ば異母兄ということもあり疎遠になっていた兄だけにあまりピンと来ないながらも彼女と奇妙な二人旅に出ることになりましたが、それは本当に奇妙な旅の始まりなのでした。。。
このあとの展開は完全ネタバレにしないと書けないような展開なので、あえて書けませんが、とにかくもどかしかったです。静は最初からそんなに旅に出ることに乗り気でなかったのですが、途中から次々と新事実が出て来てきて、その度になんだかんだと考える事が増えていき、今迄の自分の過去についても考えることが増えていきます。ある意味、それはロードムービーものの定番パターンですから、それはそれでいいんですが、明かされていない謎がすごく曖昧で主人公ならずともどうにも気持ちがモヤモヤしてしまいました。
特に、人間関係の謎や悩みは、異母兄である研吾との関係も含んでいて、なんともいえず微妙で重いです。
解説の佐野史郎さんが指摘するまで気付きませんでしたが、この「兄弟」については恩田陸さんの繰り返し繰り返し出てくるモチーフでもあるようです。言われてみれば「夜のピクニック」や「MAZE」などでも取り上げられていましたね。でも、今回のそれはきわめつけに重く、また数少ない主要登場人物のそれぞれがあまりハッピーエンドでない結末を迎えてしまうのも重かったです。
自分はここまで家族関係や人間関係について突き詰めて考えたり悩んだりしないたちだけに、余計に気持ちの部分で重く感じてしまったという部分もあるかも知れませんが。ということで、他の人がこの本でどんな風な感想をもったのか是非聞いてみたいところです。
.
- 作者: 恩田陸
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/05
- メディア: 文庫
- クリック: 21回
- この商品を含むブログ (103件) を見る