小説・漫画好きの感想ブログ

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「氷菓」米澤穂信著 

 「春期限定いちごタルト事件」などの作品で知られる米澤穂信さんのデビュー作です。
 氏が得意とする、高校を舞台にした人の死なないミステリものです。人が死なないだけに、より「謎解き」に力がいるジャンルですが、謎を謎として提示して連作の中で一つずつ解決していく話運びの巧みさ、高校の学園生活(文中で「薔薇色の」と形容詞が普通つくとされる生活)の描写、どちらをとっても一級品で素晴らしい一作です。氏のエッセンスが凝縮されています。これを読んで米澤さんの作品を気にいらなければこの後もダメだろうし、逆にこれを読んで「面白い」と思えたら米澤さんのどの作品を読んでも楽しめると思います。
 さて。舞台となるのは神山高校という地方都市にある学校。文化祭が有名なくらい色々な部活動が活発な高校です。主人公の同校新入生・折木奉太郎は、同校の卒業生である姉からのエアメールで、部員がいないと廃部になってしまう「古典部」という部活動に部を存続するため参加するよう指示され、他に部員がいないという前提で入部届けを出します。しかし、部室にいってみると先客がおり、彼女も古典部に入部したと言われます。千反田えると名乗る彼女は、名家のお嬢様らしく外見は清楚そのものながらつきあいだしてみると、その「知りたがり」の度合いは半端ないものでした。なし崩し的に、彼女と、奉太郎の親友の里志、漫画研究会とかけもちの伊原を加えて4人となった古典部。
 彼らは、千反田えるが古典部に入ることになった33年前の事件の謎を解く事になりますが、果たしてタイトルの「氷菓」の謎を解く事ができるのか?
あとは読んでのお楽しみですが、ミステリの謎解きもそうですが、読む人それぞれの青春時代を思い起こさせてくれる非常によくできた作品です。是非読んでみて欲しいです。最近の小説にしては非常に薄い200ページちょっとの物語です。是非読んでみて下さい。評価は5の5です。
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氷菓 (角川文庫)

氷菓 (角川文庫)


※上のアマゾンではスニーカーと出ていますが、今は普通の角川文庫から出ています。