小説・漫画好きの感想ブログ

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「真田手毬歌」 米村圭吾著

 「ちりとてちん」とい朝ドラがやたら人気の大阪からお送りします。
 さて、米村圭吾さんの文庫新刊です。
 今回は、豊臣秀頼の九州への脱出話を題材にした物語です。源義経しかり織田信長しかり、日本ではそこで散ったのは本人ではなく影武者で本人は遠いところに落ち延びて暮らしたという伝説がたくさんあります。蓬莱伝説で有名な徐福やイエスキリストにいたってはそのお墓迄が日本にあったりします。日本人のメンタリティーとして弱いもの贔屓の部分があるのが原因なのでしょうね。
 そて。本作ではそんなわけで豊臣秀頼が大阪城の合戦から落ち延び、九州に渡ったという伝説をもとに物語は書き起こされ、江戸時代も中期の田沼意次が失脚したあたりが舞台となっております。僅かな供回りに連れられて大阪を脱した秀頼たちの子孫、またその秀頼を慕った大魚大五郎とその子孫、秀頼脱出を助けた真田幸村配下の霧隠才蔵や猿飛佐助たちとその子孫などが繰り広げる米村ワールドは、まさに米村ワールドと呼ぶにふさわしいどこかぼんやりとした落語のような話に仕上がっています。いつもと同じ、とぼけた登場人物たちを講談風に作者が語るというパターンは従来通りです。
 また、「退屈姫君伝」に出てきた御庭番の倉地政之介やお仙のその後なども出て来て、作品世界としては完全リンクしているのはファンとしてはちょっとニヤリとさせられます。しかし、今回の題材は落ち武者伝説がまずあっての作品で、展開そのものが豊臣家の埋蔵金や真田家の深謀遠慮などわりと本来はシリアスな内容。だから、ぶっちゃけていって語り口とキャラとテーマがうまくかみ合っていない感じがしました。多くの方が指摘するように「風流冷飯伝」や「退屈姫君伝」あたりの主人公たちの背景も舞台ものんびりしたものもありですが、テーマによっては独自の文体やキャラ設定を変えた方がいいんではないかと自分も感じました。せっかく面白いのを書ける人だけに逆に強くそう思います。そういう意味で評価は5の3とします。
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真田手毬唄 (新潮文庫)

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