小説・漫画好きの感想ブログ

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映画「魍魎の匣」感想 ネタバレ注意

 京極夏彦京極堂シリーズの映画第二弾。
 原作と同じで、「姑獲鳥の夏」のあとの次の話で「魍魎の匣」が映画化されました。ということで、公開から一週間で見にいってきました。この前の織田裕二主演の「椿三十郎」の時みたいに客席にお客さんが6名ということはなく、そこそこちゃんと満員近い状態で見てきました。映画はあれですね、やっぱりある程度はこんでて熱気がある方がいいですね^^
さて。内容の方ですが、ある程度原作通りで「バラバラ殺人事件」も「御匣様事件」も起きます。ので、映画化ということでいえばまぁ及第点でした。今年は現実世界のほうでも宗教的事件として「紀元会事件」や「神世界事件」などいろいろありましたが、作品内でもインチキ宗教として「オンバコ様」はちゃんと描かれていました。と同時にバラバラ殺人事件のほうも美馬坂研究所の方も映画ならではの撮り方で再現していました。ただ、あれだけ膨大で複雑なプロットを2時間弱に収めるのは無理がありすぎで、それぞれの事件がこまぎれでどれもが中途半端になっていたのが厳しかったですね。あと、ばっさりきられちゃったのが、宮迫が演じる木場修と女優の絹子との恋がまったくなくなってしまった事。これは木場の旦那のファンとしてはえらく悲しいことだし、ここから繋がるその後の事件のことを考えるとちょっと残念。原作ではキバシュウがかんなりかっこよく書かれている珍しい巻だっただけに見せ場がなくなっちゃったのは可哀想です。
 しかし、それよりなにより(この作品については原作をある程度知っている人相手の前提で書いちゃいますが)、、、今回のこの作品はツッコミどころが満載でした。
 例えば、キャスティング。
 どうしてもこれだけは納得ができないのが久保竣公。「みっしり」という決め台詞で有名なあの連続殺人鬼がよりによって、どうしてクドカン宮藤官九郎 ??? いや、これは勝手な自分のイメージかも知れませんが、久保竣公は、美貌なんですよ、神経質で偏執狂でパラノイアでフェチではあるけれど、でも基本的にはダンディで美形でクールですらりとしてどちらかというとは虫類的な美貌なんですよ。それがどーーーーーーしてクドカン??? いや、クドカンが悪いわけではないんですけれど、クドカンってどっちかというと馬鹿面というか間抜け面ではないですか。だからものすごくギャップがあって、もしこれがミッチー、及川光博あたりがやってくれていたら(百歩譲って玉木宏でもいいけれど)どれだけ映画が引き締まったかと思うと残念です。どーみても、無理があるというかなんていうか、クドカンが行李をみっしりとしきつめて砂の中で眠るシーンがイメージできませんでした。幻想的な感じがクドカンからは感じられず、それがとても残念でした。
 あとはキャストといえば、関口巽役が前回の永瀬正敏から椎名桔平に変わったのもちょっと意外でした。前作の永瀬よりは確かに今回の椎名桔平の方がよかったんです、確かに。雰囲気としても前作よりは今回のほうがあってはいました。だけれども、関口巽らしさがあったかといえばちょっとこれも首をひねる感じでした。堂々としている関口巽、ぺらぺらとしゃべる関口巽、理路整然としゃべる関口巽はどー考えても関口巽じゃないんですよね。関口巽といえば、どもりがちで、いじいじしていて、人が良くて、引っ込み思案で、おとなしくて、運動音痴で、社交性が0なのが売りなのに(好きなキャラなのにこうして書くとひどくダメダメ人間に見える)、そういうダメダメ感がいまいち感じられなかったんですよね、そのあたりもちょっと残念。
 でも、イメージが違うという点をかえってプラスに転化したのは、堤真一京極堂中禅寺秋彦。原作だといつも苦虫をかみつぶした、おそろしい風貌の、芥川龍之介のような雰囲気の筈なのに、今回はギャグもけっこうやってくれるし(このあたりのノリは「薔薇十字探偵シリーズ」から考えると十二分に許容範囲)、最後ほうの階段やドタバタでの関クンとの掛け合いなんかはかえってこの映画を切っ掛けにファンを増やすかも知れずいいかも知れないと思いました。
 まぁ、全体的には楽しく仕上がっていたし、戦後すぐの雰囲気を出すために中国ロケをやっていたりしてかなり見れる要素もあったし楽しめましたが原作から考えるとかなり雰囲気は違います。原作で「魍魎の匣」の最大の売りだった幻想性や猟奇性みたいなとこがまったくなくなってしまったのが残念でした。あと言おうか言おまいか悩みましたが、もう書いちゃいますが、最後の最後にはサプライズのエンディングがありましたが、あのラストの映像はちょっとこれはいろいろな人の意見も聞きたいですが、自分的には「なし」でした。いや、もう少しそこは幻想的にやって欲しかったですね。
 ということで、「魍魎の匣」ネタバレ&あらすじありの映画感想でした。 
 
 追記 映画の雰囲気が変わったのは監督がウルトラマンのシリーズで有名な実相寺昭雄監督から変わったのも大きいかと思います。あと篠原涼子さんが雪絵さん役でゲスト出演しておりました。