「攘夷」 佐伯泰英著
こんにちは、樽井です。
今日はもう一冊。これもしばらく前に読んだ本になるんですが、佐伯泰英さんのシリーズの一つである座光寺藤之助が活躍する「伊奈交代寄合集」シリーズの最新刊です。
今回は、長崎逗留中の藤之助の恋人である玲奈やその母ら隠れキリシタンを掃討すべく幕府より高官が派遣されてきます。彼らは、密偵を潜り込ませ、過酷な尋問でキリシタンを次々に獄死させていきます。藤之助や玲奈はキリシタンを救うために出来る限りの行動を起こしますが、どうやら彼らの狙いはそれだけにはなかったよう。どうやら、幕府の屋台骨が揺らぐ中で芽生えた尊王攘夷という思想が、大きなうねりをもって各地に戦いを巻き起こしそうな気配です。
佐伯氏のもう一つの人気シリーズである「居眠り磐音」のシリーズが田沼意次が老中だった当時の腐敗した時代を背景としたのに対し、このシリーズでは勝麟太郎が登場する事からもわかるように幕末の物語。ここからは単純な力関係てはなく物語の舞台が長崎であることもあいまって、各国の勢力や思惑、そして国内の藩同士の戦いも加わっての混沌とした状況が舞台背景になりそうです。
その中で、どこまでもまっすぐな藤之助が何をなしていくのか。
そういう対比で見比べると、物語の構図は完璧に用意され、このあとは一気に明治維新の大きなうねりの中で物語は加速していくものと思われ、期待は高まります。ひょっとしたら、坂本龍馬や西郷隆盛も出てくるかも知れません。
ただ。
今作、前作とこのシリーズを読んでいるとどうも物語がワンパターン、描写が単調になってきた気がして残念だし不安です。菊地秀行、栗本薫、或いは森博嗣なみに多作、刊行ペースの早い佐伯先生ではありますが、ここはじっくりとあとちょっと刊行ペースを落としてでも、御本人も大満足できる作品を描いてい欲しいと思います。せっかくいい作品を書くんだし、ファンもたくさんついている方だけに、このシリーズ、満足のいく形で書いていって欲しいと思います。そんなわけで5の3の評価にします。
- 作者: 佐伯泰英
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/11/15
- メディア: 文庫
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※なぜか、はてなの本紹介ツールを違ってこの本を検索すると村上春樹のこの本と、東京創元文庫の「ラブクラフトの遺産」があがって来ます。どうして?