小説・漫画好きの感想ブログ

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「レイチェル・ウォレスを捜せ」 ロバート・B・パーカー著 

 
 下のほうで、文庫最新版の「真相」を挙げた絡みで、昔読んだ「レイチェル・ウォレスを探せ」の感想もアップしておきます。
 ごりごりの男性主義者でマッチョで暴力的で、それでいて詩と料理をこよなく愛する主人公のスペンサーは、マイクハマー同様にごついことはごつい探偵ですが、それよりももう少し理知的で妙な味のある探偵です。
 また彼は同時に、とてつもなく保護者的な感情が強く、常に彼女や依頼人のような守るべき人を強く求めます。逆にいうと、そういう非保護者に頼られることで初めてアイデンティティーを保っているともいえます。そして、そのことは更に彼の男性優位主義。よく言えば、女性は守るべき存在であり騎士道精神の発現の相手と捉える心理、悪く言えば女性を一歩劣ったものとして考える心理を補強しています。
 そういう意味ではちょっと時代遅れのヒーローではあります。
 さて。
 そんな彼が、女性の人権強化運動の騎手であり、女性の地位向上を訴える闘士で、なおかつレズビアンの依頼人をもった場合にどうなるのか、そんな興味深い事態を描いたのがこの『レイチェル・ウォレスを捜せ』です。
 レイチェル・ウォレスというのが、その女性なんですが、彼女はその主張のために行く先々で迫害を受けます。講演会があるとなると、その前にはピケが張られ、朗読会があるとなると彼女がレズビアンてある事を理由に嫌がらせのプラカードが林立します。
 そして、最近では脅迫状までもが届くようになりました。
 そこで、われらがスペンサーが彼女のボディガードとして雇われる事になったのですが、、、スペンサーとレイチェルの二人はお互いの主義主張のあまりの違いにしっくりときません。あまりにも価値観と倫理観が違いすぎるので無理はありませんが、ことごとくかみ合いません。
 レイチェルはレイチェルでスペンサーのへらず口と暴力に我慢なりませんし、スペンサーはスペンサーでいくら主義主張のためとはいえ依頼主の女性が不作法な扱いを受ける事に我慢がなりません。
 二人はとあるトラブルへの対応から、雇用関係を解消します。
 が、その直後、レイチェルが誘拐されてしまいます。明らかに政治的な誘拐ですが、犯人からの声明は全くありません。レイチェルは誘拐されたままになってしまいます。それを受けてスペンサーは依頼がないままに彼女の救出に動き出します。。
 シリーズ中期のターニングポイントになったとも評されるこの作品は、プロットや謎ときにおいては駄作ですが、そういう葛藤を楽しむぶんには十分に傑作です。発表年がもう18年も昔なので、今からすると時代おくれの主張を二人がしていたりしますが、そこはおいておいてあげてください^^