小説・漫画好きの感想ブログ

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「フラッタ・リンツ・ライフ」 森博嗣著

 こんにちは。
 阪神にトレードで日本ハムからやってくる金村暁選手。
 全然存じ上げない選手でしたが、東京のあの六本木ヒルズに住んでいたらしいのですが、阪神に移籍を機にスパッと処分。「関西に骨を埋める覚悟で来ました」とのこと。そこまで言ってくれる右腕投手ならばタイガースファンとしては贔屓にしないといけないですね。
 阪神はなんとしても先発投手陣が安定してくれないといけません。もちろん、打撃の方も十二球団でワーストといっても過言ではない打点、打率ですけれど、先発さえ安定してくれたらという所はありますから、期待したいと思います。薮とか帰ってこないかなぁなんていう気もまだあったりするんだけれど、まずは一人確保ですね。 
 さて。


 「フラッタ・リンツ・ライフ」 森博嗣

 森博嗣の描く飛行機乗り達のシリーズの第四作です。
 「スカイ・クロラ」「ナ・バテア」「ダウン・ツ・ヘヴン」「フラッタ・リンツ・ライフ」そして最終巻の「クレイドゥ・ザ・スカイ」へと続くシリーズの四冊目に当たります。
 このシリーズは来年押井守監督の手でアニメ映画化されるのでぼちぼちと一般で話題にものぼってきていますが、他の森博嗣のいくつかのミステリシリーズである「S&Mシリーズ」(犀川先生と西之園萌絵)「Vシリーズ」(瀬在丸紅子と林警部、保呂草)「Xシリーズ」「ギリシア文字のシリーズ」と同等、もしくはそれ以上に森博嗣らしさが全開で出ているSF&ミリタリーなシリーズです。
 この作品世界では、戦争は代理戦争といってもいい局地戦で行われ、それぞれの戦争は各企業が代理的に企業同士で行います。ですから、ある意味、普通の戦争のそれのように略奪戦や焦土戦は存在せず、一定のルールのもとで戦いは繰り広げられています。そして、それらの戦争には比較的多数の「キルドレ」というほとんど年を取らない人工的に手を加えられた人間が参加しています。このシリーズの主人公である「草薙水素」という女性もその一人であり、本作では一人称で物語を最初から最後迄語りつくす「ジンロウ」もその一人です。
 彼ら「キルドレ」は老化して死ぬということがないために、通常の人間とはやはり感覚・感情の表れ方が違います。世間の人たちが話す価値や目的に共感できず、子供と同じ感覚で楽しいか楽しくないか美しいか美しくないかを彼らの感性で判断し、それに従って生きています。だから、彼ら彼女らは空から降りて来て地上にいる間はなんだか夢の中を生きているように自分の強い主張はなく誰かにこだわるということも強く執着するということもあまりありません。ある意味、ねじれています。
 ただし、一旦空に上がってドッグファイトが始まると彼らは心浮き立ち、まさにこの時の為に生きているのだと全力で戦いに挑みます。その描写のキレの良さ、削ぎ落としたような文章、そして行間からつたわってくるアクロバティックな戦闘シーン。それはファンならずとも一読に値すると思います。空の上でダンスを躍るように戦い、戦闘機とともに散っていく命。地上戦ではないからこその泥突いたところのない幻想的な戦闘シーンは美しいです。
 彼らは、その戦いだけが自分たちに対する誠意であり生きる目的だと全力を賭けて戦います。
 しかし、そうはいってもキルドレは、戦争パイロットとしての機能しかないわけでなく基本的には人間であるだけに感情の発露や持ち方が違うだけでそれは存在し、今作などでは主人公のジンロウはその為に色々と振り回されます。上官であるクサナギと、彼女と知り合いであると同時に元同僚のパートナーだったらしいサガラという女性の間でふりまわされる事になります(ここに一番肉体的な接触の多い娼婦のフーコがまったく入らないところが、キルドレらしいといえばらしいですが)。上官であるクサナギの秘密をまつわる事件にまきこまれていきます。
 かなり時間を忘れてのめり込んで一気に読んでしまいました。
 このシリーズ、ハードカバー、ノベルズ、文庫と各パターンで出ていますが、是非、ハードカバーで読んで欲しいです。というのも装丁が非常に美しいのです。ある意味、今出ている本の中でもかなりトップレベルの装丁がされていると思います。空の写真とクリアカバーなんですが騙されたと思って手にとって下さい。この作品のカバーは紫ですが、スカイ・クロラの青空は感動的ですらありました。
 あと、作品の時間軸的には冒頭の発表順とは違って、「スカイ・クロラ」が最後になるんですが、「スカイ・クロラ」から読んでもいいですし、次の「ナ・バテア」から読んでもいいと思います。
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フラッタ・リンツ・ライフ―Flutter into Life

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