小説・漫画好きの感想ブログ

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「前巷説百物語」 京極夏彦著

 おはようございます、樽井です。
 今日の新聞の記事を読んでいると、いよいよ「脱ゆとり教育」で新学習指導要領では内容の大幅な復活や基礎学力の底上げを図っていくことが決まり、それも大幅な二年程度の前倒しで出来る所からやっていくことが定まったようで、これは元教育関係者からすれば大きく評価したいことだと思いました。今の子供達の学習メニューは内容はたりないし、たりないだけでなく分かりにくいし、公立と私立の格差を決定づけるようなものだっただけに、この揺り戻しは歓迎したいと思います。
 猫の目のようにくるくると教育体制・方針が変わるのはいただけませんが、今回だけは悪令は速やかに改善するをもって最良と為すという政治の大原則通りで正解だと思います。愛国心教育や生きる力といった理念だけは立派ながら内容がきちんと定まらないものを見切り発車的にやるよりは、まずは基礎学力をしっかりとつけてあげる方が子供の為でしょう。道徳については、いれるべきだと思いますが、それこそそれは総合学習をそれにあてるという形でよいと思います。
 この問題については、また機会があれば改めて書きます。
 小沢一郎民主党代表のことについても各社の報道状況を見極めた上でまたいずれ書きます。
 さて。


 「前巷説百物語」 京極夏彦

 「京極堂シリーズ」「榎木津薔薇十字探偵シリーズ」とならぶ京極夏彦の人気シリーズ「巷説百物語」のシリーズ最新作です。
 このシリーズは、幕末から明治初期にかけての物語で、わかりやすくいえば京極版必殺仕事人です。事件を解決するために主人公の又市とその仲間の面々が悪党を相手に仕掛けを施すというのが大枠の短編連作集となります。
 そして、この「前巷説百物語」は、主人公の又市が「巷説百物語」「続巷説百物語」などでは狂言まわしとなる百介と出会う前の話になります。いわゆるエピソード1や、ビギニングものにあたります。ただ、凡百の外伝と違って、主人公の又市のキャラがしっかりとたっており、後の時代の渋い全てをわきまえた仕掛人ではなく、まだ若くて青臭くて、でも後の彼にたしかに繋がる心のあり方や基本スタイルがしっかりとあり、これ一冊だけで十分面白く読み応えのある一冊に仕上がっています。相手を殺すのは解決ではなく、出来る限りそこから逃れよう逃れようとして(ときにやむなくそうせざるを得ないときみあるものの)、妖怪をだしに事件を解決しようとする又市の熱さが伝わって来ます。
 身分制度、行政制度、闇の仕組みなどの中で、自分たちの出来る中でひと仕掛けを施し、なんとか事件を解決しようとする又市。後の時代と違ってまだまだ仕掛けのレベルやスケールは当然小さいわけですが、それでも、彼の出発点としての物語としてはすごくよく出来ていると思います。過去にさかのぼる話だけに制約も多い中でですが、十分にファンを納得させる面白さのある作品に仕上がっています。
 「巷説百物語」のファンであれば是非読んでもらいたい一冊です。後の物語でもキーとなる御灯の小右衛門との出会いも描かれていたりとにやりとする話も入っています。ただ、できればこのシリーズに関しては「巷説百物語」「続巷説百物語」と続いたあとで、この「前巷説百物語」もしくは「後巷説百物語」と進んでいただきたいです。人物紹介はしっかりと入っていますが、その順に読んだ方が面白さは増します。
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前巷説百物語 (怪BOOKS)

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