小説・漫画好きの感想ブログ

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映画の「墨攻」 

 こんにちは、樽井です。
 以前に紹介していた酒見賢一さんの短編小説「墨攻」の映画版(どちらかというと酒見さんの「墨攻」を、森秀樹さんという漫画さんがビッグコミック連載用に仕立て直したマンガ版を韓国が映画化した版 あーややこしい)です。
 原作小説は、本当に短くて、その短さ故に逆に読んだ後あれこれと考えさせられる作品でした。
 それだけに、大作として作られたこの映画版がどんな風になっているのか、仕上がりはどうなのか期待と不安で見ましたが、結論からいえば微妙。いや、映画としてはよく出来ていて、美術も、アクションも、役者さんもいい演技をしているし、楽しめるんですが、原作とはかなりトーンが違っていて、そちらの方が気になりました。
 なまじ原作を知っているからかどうか分からないんですが、いろいろな要素を詰め込みすぎかなぁと感じました。
 10万人の大軍を、住民もいれて僅か4000人の小城で篭城、撃退しようという無理難題の中で墨家の革離がどうやって城を守っていくのかという非常にシンプルなコンセプトから大きくそれた本映画は映画としてはよく出来ているんだけれど、メッセージ性が違うところに行ってしまったような気がします。墨家の凄さは前面に出ていないですしね。
 原作を読むと、一つの思想が人々を変え、立派に実を結ぶものの、これまた一人の人間の気持ちによってあっけない結末を迎えるところに、いろいろと汲み取る寓意があったんですが、この作品ではそこに余分な要素を持ち込みすぎた感じがします。恋愛ものの要素や、葛藤する若き嫡男であるとか。
 ただ、映画それ自体としてみるとひさびさに大作映画の迫力とか、力強さ、美術の美しさなどがあっていい映画なんですよね。だからちょっと評価が微妙。案外、原作を知らずに見たら素直におすすめ映画になったかも知れません。
 特に、出演者たちがどれもいい演技だし、日本の役者さんのように他の役のキャラクターや素顔がわからないから素直に感情移入できます。主役のアンディ・ラウは演技が渋い、ファン・ビンビンは気の強い女性隊長を好演、ワン・チーウェンは情けない領主の演技をも見事に演じきっています。あとはチェ・シウォンという役者さんがその息子の苦悩する次期領主役をしていましたがこれもよかったなぁ。自分は中国映画とか韓流映画とかはほとんど見ていないので(「冬のソナタ」すらまったくです、ジャッキーとかの映画は昔よく見ましたけれど)、全然色のついていない状態で見れたから特にそのあたりでは古代中国にそのままはまり込めました。
 ちょっと前の映画なので普通にレンタル一週間とかいけるはずの作品です。
 

墨攻 [DVD] ASBY3865

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 追記 さきほどアマゾンさんに依頼していた本が今日配達のお知らせ。村上春樹最新刊「走るときに語ることについて僕の語ること」がつくそうです。今読んでいる京極夏彦さんの「前巷説百物語」と並んで今日はしあわせな読書日和になりそうです。