小説・漫画好きの感想ブログ

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「魔境遊撃隊」 栗本薫著

 goludiusさんに、栗本薫の初期SFは? とたずねられて半日色々思い出しながら何がいいかなぁと思って考えましたが、これがなかなかに難しい。実のところ、樽井が本をたくさん読んで買い始めたのの最初の頃はこの栗本薫さんの本が圧倒的に多かったのです。本を買い始めた頃って、同じ作家さんの本をどんどん買っていくじゃないですか。そういう意味においては、この栗本薫という人はもうそれこそ大量にひたすら本を出版し続ける人で、僕が本を読み出した頃にはすでに大量の本が出ていておかげでどっぷりと彼女の世界に浸かることができました。
 いまでこそ栗本薫さんというと、グイン・サーガでもうちょっとファンの方を向いて仕事して欲しいとか、ネットとかで痛い発言をしたりするのをどうにかして欲しいとか、そんな事を厳しい目に言われちゃっている方ですが、当時はもう「ぼくら」シリーズとかの叙情たっぷりのミステリもあれば、クトゥルー物をがんがん書いていたり、「魔界水滸伝」という日本の先住者・妖怪たちとクトゥルーたちの闘いを描いた作品があったり、そうかと思えばハードボイルドの小説群があったり、「真夜中の天使」とか「終わりのないラブソング」とかいうボーイズラブ系もありーので、とにかく文章の神様みたいな感じだったのです。そして、その中でもSFについては非常に繊細で素晴らしかったです。
 だから、あれこれ考えてみたのですが、、、結局選んだのは「魔境遊撃隊」でした。残念ながら、この時期の栗本作品って多くは絶版のようで、しかも自分の家の段ボールをひっくりかえすわけにもいかないので、見記憶を頼りに絶対的におすすめするとしたらこれがやっぱり一番かなと感じました。
 主人公は栗本薫
 ただし作品中の栗本薫は「ぼくら」シリーズの栗本薫なので、男性、青年です。この彼が印南薫くんという少年と執事に誘われて南海の孤島に行くのですが、そこに居たものとは、、ということでSFとクトゥルー神話と冒険ものがないまぜになったようにストーリーに当時とても興奮したのを覚えています。途中、石の神殿を歩くシーンが出てくるのですが、そこの壁面にグインと思われる人物が彫り込まれているのがあったり、このあたりからすでに栗本薫の中ではエルリックのような多元宇宙やエターナルチャンピオン的な要素を自分の膨大な作品群に入れこんでいこうとしていたのだなと今にして思えば気付きます。話の細かいところは忘れてしまいましたが、ところどころの描写にはやはり目を見張るものがあったのでしょう。いまだに断片的にシーンシーンが映像で思い浮かびます。つまり、文章で書いたのにそこにあるようにイメージさせる力の強い文章でこれは書かれていたということです。
 今手に入るかどうかと言われるとちょっと微妙かもしれませんが、初期栗本SF作品を一つ、「レダ」や「セイレーン」「心中天浦島」を読んでいるならという前提つきならこれをおします。 
 
 

魔境遊撃隊〈第一部〉 (ハルキ文庫)

魔境遊撃隊〈第一部〉 (ハルキ文庫)