軍犬と世界の痛み マイケル・ムアコック
おはようございます。
若干ながら二日酔い気味ではございますが、シャワー浴びてもうちょっとしたら仕事に出発です。ニュースを見ながら書き込みしていますが、総裁選は福田さん有利のまま派閥の理論で勝ってしまいそうですね。今夕には福田康夫首相のできあがりと。麻生太郎さん、党幹事長という自民党内部では大きなポストについたのにほんの僅かの間でそこからも追いやられてしまうとは、ちょっと可哀想な気もしますね。衆議院と参議院のねじれに、安倍さんの無茶な責任放棄でぐしゃぐしゃになった今回の状況下で一番とばっちりをくったのもこの人かもしれません。
あ。あとニュースで京都の女子学生が父親の警察官を手斧で殺したというニュース、娘のファッションがゴスロリだったという事をしきりに強調していますが、あれはなんなんでしょうね。ゴスロリそれ自体が責められるようなものではないと思うんだけれど。例えば、犯人が渋カジ(古いな)だったとか、モード系だったとか、セレブ系だったとか、そういう場合にここまでそれに拘ったかといえば拘らなかったと思うんですよね。ゴスロリを別に擁護するわけじゃないんだけれど、あれはあれで一つのジャンルで似合う人が着ればかわいいものだし、それと犯罪の内容とは別にリンクするものじゃないんだから、なんかあれはニュースの作り手の感性というか偏見がたぶんに入っているような気がして嫌です。
ゴスロリを着ている人ってのは、あれで電車とかバスに乗っているといやでも視線が集まるし、それを跳ね返して着ているとこにポリシーを感じるし、似合えばかっこ良かったりかわいいなと樽井は思います。
とと、脱線が過ぎたので本筋。本の紹介です。
軍犬と世界の痛み マイケル・ムアコック
本日紹介するこの本は、サブタイトルが<永遠の戦士 フォン・ベック1>となっておりまして、マイケル・ムアコックの永遠の戦士(エターナルチャンピオン)シリーズの一冊です。が、他の永遠の戦士のシリーズ、例えばエルリック・サーガや、ホークムーン・サーガなどとはそれほどリンクしていないし、この一冊で物語は完結するので、独立した一つの物語としてこの本は読む事ができます。
他のシリーズとの共通点といえるのは、世界の運命を主人公(この本では、ウルリッヒ・フォン・ベック)が全て担うことになるというその一点くらいです。
さて。
舞台は、30年戦争の真っ最中のドイツ、ということはプロテスタントとカトリックが激しく戦う宗教戦争のど真ん中でヨーロッパ中に戦乱が絶えなかった頃の話です。主人公のウルリッヒは地方貴族の息子として騎士になるものの、宗教戦争の中で宗教に関しては懐疑的となり、自分の肉体、戦争の中での技術だけに真実を見いだす、いつしか軍犬との異名をとるほどの名の通った、騎士というよりは傭兵隊長といった方がいい人間になっていました。
そんな彼ですから、自分の部隊からペスト患者が出たとき、迷わず彼は部下たちを捨てさり一人で旅にでます。
しかし、その旅こそがウルリッヒをして運命の扉をあけさせる旅立ったのです。
旅の途中の、ある古城で彼を待ち受けていたのは、絶世の美女のサブリナと、なんと超越者、堕ちた天使にして地獄の支配者であるルシファーでした。ウルリッヒは最初、彼が神であることや彼の放す言葉を信じようとはしませんでしたが、一緒に地獄巡りをすることでいやおうなくルシファの言葉を信じざるを得なくなります。
かくして、彼は堕天使ルシファーを主として、彼の為に働くことになったのですが、その仕事というのが奇想天外でこのアイデアだけで自分的にはこの作品に星五つをつけたいくらいです。その仕事とは「ルシファが神と対立したことを反省している証として、神に捧げる「この世界の痛みを癒すもの」=聖杯を探し出してくること」でした。聖杯の探索という、騎士の中の騎士の仕事、本物のパラディンしか出来ないとされる仕事を悪魔の王ルシファーが人間に頼み込む、それも自分が天使として再び天界に戻るために頼む、というアイデアはさすがに類似したものを見いだせず、この部分だけでも十二分に評価されていい作品だと思います。
内容の方も、皮肉が効いていて一筋縄ではいかず、ダンテの「神曲」のような地獄巡りのあと、数々の冒険をウルリッヒはすることになります。時間の関係でこのあたりでさっくりと感想をまとめてしまいますが、ひねりのきいたファンタジーであり叙事詩です。
軍犬と世界の痛み (ハヤカワ文庫SF ム 1-31 永遠の戦士フォン・ベック 1)
- 作者: マイクル・ムアコック,佐伯経多&新間大悟,小尾芙佐
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/09/06
- メディア: 文庫
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