小説・漫画好きの感想ブログ

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キラレ×キラレ 森博嗣 

 
 ということで、「キラレ×キラレ」です。
 森博嗣の×シリーズの第二作で、第一作の「イナイ×イナイ」で登場した椙田探偵事務所の探偵助手(秘書)の小川令子と、事務所のボランティア真鍋瞬市、そして別事務所の探偵鷹知祐一朗の三名が今回も登場します。もちろん、椙田も出ますし、西之園萌絵も前作同様に出て来ますが、こちらは本筋ではない出方なので、パターンを一度決めたら様式美として崩さない森先生のことですので、この三人+サブで二人がこのシリーズの主要登場人物となるのがこれでほぼ確定したといっていいでしょう。
 さて。
 今回は、満員電車の中での連続切り裂き魔事件に彼らが挑みます。切り裂き魔といっても、この犯人は、被害者である30代の女性たちの背中を満員電車で薄く切り裂くぐらいで、暗い夜道で通りすがりの女性を滅多切りにしたりという事はしません。とはいえ、結構な危険人物であることは間違いなく、そもそもの始まりは、三人目の被害者が出たときに犯人と間違えられた建設会社の重役が鷹知に事件解決の依頼をしたことから物語は始まります。
 犯人はどうして、三十代の女性ばかり狙うのか。
 そもそもからして不可思議な事件は彼らにとある共通項があることを彼らが見つけたところから、徐々に解き明かされていきます。何故に被害者は彼女らなのか? どうして犯人はそんなことをするのか? 徐々に解明されていきます。ある意味、
非常にオーソドックスなミステリ的な展開が行われます。
 そして、それこそは逆に森博嗣のミステリにしては結構珍しいパターンで、それが逆に自分には新鮮に感じられました。前作は、プロットがまずありきで、しかもそれは森博嗣のパターンに嵌りすぎていたためにたぶんネタがすぐに割れてしまった読者も多かったと思いますが、今回はそのネタが割れることも含めてきちんと王道展開をしていてそれが新鮮で、樽井的にはこの作品には高評価を出したいと思います。
 SMシリーズや、Vシリーズほどのインパクトはやはりちょっとないのですが、今後に期待をつなげる展開なのではないかなと思います。

キラレ×キラレ (講談社ノベルス)

キラレ×キラレ (講談社ノベルス)