小説・漫画好きの感想ブログ

小説・漫画好きの感想ブログ

カラマーゾフの兄弟とロング・グッドバイ

 まずは本日付けの以下の記事を。
<<<<
新訳「カラマーゾフの兄弟」異例のベストセラー 混沌の時代、生きるヒント

 ロシアの文豪、ドストエフスキーの名著「カラマーゾフの兄弟」の新訳本が26万部を突破し、古典文学としては異例のベストセラーとなっている。最終巻が出版された7月にはインターネットの文芸本ランキングで4週間連続のベスト10入り。旧訳本も相乗効果で売り上げを伸ばす。ミステリーとしてのおもしろさはもちろん、男女の愛憎や幼児虐待、テロリズムなど現代にも通じるテーマが、混とんとした時代を生きる現代人の心をとらえているようだ。
 「カラマーゾフの兄弟」は、1880年に出版されたドストエフスキー最後の長編小説。新訳は東京外国語大学教授の亀山郁夫氏が担当し、光文社古典新訳文庫から昨年9月、第1巻が出版された。
 新訳は全5巻。同社によると、これまでに計26万5000部を達成。同社翻訳出版編集部の川端博さんは「古典文学としては異例の売り上げ。増刷も決まり、30万部は固い」と期待を寄せる。最終巻が出版された7月中旬以降、インターネット通販「アマゾン」の文芸本ランキングで4週連続のベスト10入りを果たす人気ぶり。アマゾン広報も「古典文学のランク入りは珍しい」と話す。
 新潮社は、東京大学教授が新入生に読ませたい小説ナンバーワンに同著が選ばれているという東大出版会の月刊誌「UP」のアンケートに着目。芥川賞作家の金原ひとみさんが「上巻を読むのに4カ月。中、下巻はほぼ3日で読み終えた」と紹介した新聞書評にも目をつけ、昨年6月、文庫本の帯を作成したところ、これまでに、上、中、下巻合わせて約13万1000部と、爆発的に売り上げを伸ばしたという。

という記事が出ていましたが、今、なぜカラマーゾフの兄弟かという話に関しては、村上春樹を抜かして語るのは片手落ちという他ないんじゃないかなと僕は思います。というのも、村上春樹は、彼のファンとのネットを通じての対話というか質疑応答本(うまいたとえが見つからないが「生協の白石さん」のようなもののもっと濃い版。代表的なもののタイトルは『スメルジャコフ対織田信長家臣団』とか『「そうだ、村上さんに聞いてみよう」と世間の人々が村上春樹にとりあえずぶっつける282の大疑問に果たして村上さんはちゃんと答えられるのか?』等)を出しており、その中で非常に強く強くこの「カラマーゾフの兄弟」をプッシュし続けていたからです。そして、確実にそれは外国文学、それも準古典的なものを未読の層に強く訴えかける力をもっていたからです。
 こう書くと、それは村上春樹ファンのひいきのひき倒しではないかと言われるかも知れませんが、ちょっと考えて欲しいのです。村上春樹さんの最近の海外作品の翻訳を。前々からのレイモンド・カーヴァーは言わずもがなですが、彼が翻訳した「ロング・グッドバイ」や「キャッチャー・イン・ザ・ライ」の異常な売れ方を。
 フィリップ・マーロウを主人公にした『ロング・グッドバイ』はもとから日本でも『長いお別れ』というタイトルでかっこいい清水訳があったにも関わらず、村上春樹が訳してたった一週間で15万部、現時点では40万部近く売れているという話です。これ、ミステリファン、ハードボイルドファンの自分がいうのもなんですが、売れすぎて売れすぎて、という感じではないでしょうか。となると、この『カラマーゾフの兄弟』の売れ行きにも金原ひとみさんの影響を見るよりは村上春樹の影響を見るほうが自然ではないかなと思うのです。
 人気作家の翻訳だとバカ売れするなんて話になっちゃうと、少し前に話題になった太宰治の『人間失格』の表紙を、小畑健さんがデスノートの夜神明風に描いたらバカ売れしてという話とかぶってしまいますが、そんなことを思うのです。もちろん、「人間失格」もそうですが、このカラマーゾフの兄弟」や「長いお別れ」なんかも中身が素晴らしいから、それが通用するのが大前提ですけれど。(ちなみに樽井は「ライ麦畑で捕まえて」は作品的にはあんまり乗れなかったんですがまぁそれは好みの問題で)

 ・・あぁ、珍しくまじめな感じになっちゃいました。ひかないでくださいね。