小説・漫画好きの感想ブログ

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「密偵ファルコ 水路の連続殺人」 L・ディヴィス 

 
 こんにちは,樽井です。
 今日は昼からひたすら掃除洗濯していました。那覇空港で中華航空機が炎上しているとニュースあたりからずっと片付け、くたくたです。
 放心状態で、ぼんやりとテレビドラマの再放送を見ています。「拝啓、父上様」という作品で、最近何かと話題の二宮和也さんが出ています。彼がやっているドラマを初めてちゃんと見たんですが、彼、よい役者さんですねぇ。ぼーっと抜けた頼りない見習い板前を演じています。何かと迷い、好きな女の子のことを考えてすぐ妄想モードに入ったりする主人公で、本当にちょっと頼りない感じなのをうまく演じています。
 お盆休みに毎日二話ずつやっているのを見ていたのですが、結構気にいりました。
 で、さっき、はっと気がついたのですが、主人公が惚れている黒木メイサさんではなくて、主人公の勤めている「坂下」という料亭の一人娘で主人公の二宮和也さんに惚れている役の女優さんが、なんと福田沙紀さんなのでした。福田さんといえば、おとつい「ライフ」というドラマでは主人公をいじめるめちゃ怖い役柄の女子高生を演じていたのですが、こちらのドラマではすごくかわいらしい女子高生を演じていたので気がつきませんでした。
 やはり、女優さんは女優さん、うまいですねぇ。
 さて。それはさておき片付けしていて出ていた本を一冊。

密偵ファルコ 水路の連続殺人」 L・ディヴィス

 これは古代ローマを舞台にしたミステリーです。
 具体的には紀元73年、ウェパシアヌス帝が統治するローマが主な舞台です。もちろん、ミステリーといっても舞台が古代ローマですから、指紋はもちろん、血液型鑑定や遺伝子鑑定も出てきませんし、ましてや時刻表トリックなんてものはありません。しかし、それでもしっかり上質ミステリとして成立するとともに、古代ローマの知識が知らず知らずと身についていくという優れもののミステリーがこの「密偵ファルコ」のシリーズで、そのシリーズ第10作が本書にあたります。
 主人公の名前はマルクス・ディディウス・ファルコ。彼は平民の大家族の息子ですが、今は独立して密偵をしています。もともとは栄えあるローマ軍人の一人でしたが退役した後は自宅近くの部屋を借りて、密偵業を営んでいます。本人は、本当は詩が好きで自分の詩を発行して舞台で朗読したいという夢をもっていますが、才能はそれに追いつかず、ひたすら肉体派のハードな密偵をしています。特に、シリーズ初期に登場したヘレナ・ユスティナという元老院議員の娘を妻にし、子供をもうけた最近では子供のためにもひたむきに働くことを要求されています。なんとなれば、その結婚はローマの法では認められない階級違いの結婚だからです。
(話はちょっとそれますが、チャンドラーの「フィリップ・マーロウ」シリーズ以降のハードボイルドな主人公はみんな詩を好み、自分でも詩を作ったりしますね)
 そんなファルコのもとには時に皇帝からの依頼が舞い込んできたりもしますが、今回は、たまたまの偶然から、ローマの上水道(古代ローマでは上水道・下水道が完備されていた)にバラバラの死体が遺棄されていることを発見したファルコが、元執政官のユリウス・フロンティヌスに依頼され、事件解決に乗り出します。相棒は、おさななじみでローマ警備隊の第13警備隊の隊長で、今は停職中のペトロニウス・ロングス。彼は、不倫がもとで奥さんに逃げられ定職、しかも不倫相手が地元マフィアの娘という非常にややこしい状況下でファルコと組みます。
 さて、ユリウス・フロンティヌスという名前にピンときた方もいるかと思いますが、彼は実際の歴史上の人物でローマの水道改革を行うあのフロンティヌスで、ストーリーはその史実をうまく生かして進みます。
 冒険あり、家庭内のドロドロあり、風物あり、で非常に面白くこのシリーズはどれをとってもそうなんですが、とてもハリウッドの映画向きなのではないかと思います。「グラジェーター」とか「トロイ」とかああいう感じです。

密偵ファルコ 水路の連続殺人 (光文社文庫)

密偵ファルコ 水路の連続殺人 (光文社文庫)