「腹切り同心」菊地秀行
続けて、もう一つ記事。
夏らしく怪談ものをアップします。
これは、菊地秀行さん(「バンパイアハンターD」とか「魔界都市シリーズ」とかの方です)のシリーズの一つで、江戸時代の武士たちを主人公にした幽霊や妖異話を集めた短編集の三冊目になります。このシリーズ、陰惨な部分もありますが、どちらかというとユーモアやひねったアイデア話が多く、菊地秀行ぎらいの人でもすんなりと読めると思います。
例えば、表題作の「腹切り同心」の主人公は、「いつでも腹をきる覚悟はできている」というのが口癖だった厄介な男が、ある日本当に腹を切ってしまったものの、そのままゾンビになって家にいついてしまう話だったりします。腹に刀は刺さったままだし、食べたらそれがおなかから出てくるような大男の武士が部屋にいつくだけでも厄介なのに、それが死ぬ前につきあっていた女の本意が知りたいとせっつくなんてのは怖いより笑ってしまう話です。
もちろん、鬼気迫る話も怪談ものなんで収録していますが、それも短編なので夜も眠れない、まではいきません。気楽な感じで読める時代劇の怪談ものです。