小説・漫画好きの感想ブログ

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「オーデュポンの祈り」伊坂幸太郎著

 伊坂幸太郎さんの本を最近ちょっと読み返して、この彼のデビュー作を最初に取り上げようと思っていましたが、眠気が先に来てしまいました。この項については明日書き足します。伊坂さんは、最近出て来た方の中では、ダントツに好きですね。文体の軽さと言い回しがいいですね。僕はどうもそういうタイプが好きのようです。
 (といいつつ、グイン・サーガペリー・ローダンを未だにえんえんと読み続けていたりもするし、北方謙三の「三国志」も読んでいたりはしますが・・)
 阪神タイガースも負けちゃったし、今日は早めに寝ます。

 さて。出勤前。
 今日もちょこっと書評を。
 
 ふとしたはずみでコンビニ強盗をしてしまった主人公。
 彼は奇妙な運命に導かれて、日本本土のすぐ側にありながら、百年以上も本土と隔絶した萩島という島にたどり着く。島についた主人公は、島には百二十年もの前から、「島にかけているものを、島の外からやってきたものがもってくる」という予言があることを知ります。しかも、その予言はしゃべる案山子(田んぼにある案山子です)がしていると知ります。日本でありながら、日本でない閉鎖された島。そこに足りないものは何か、主人公は島で起こるさまざまな事件に巻き込まれる中で考えていきます。
 しゃべる案山子や、嘘しかつかない男、異常に太ってしまった路傍から動けなくなったまま生活している女性、人を殺すことが認めれられている人間、などなど奇妙な登場人物が出てくる世界で、主人公が感じる不思議な共感。
 普通に考えたらあまりにでたらめすぎて破綻してしまいそうな世界が、変な部分を語りの力で納得させる伊坂幸太郎氏の力量あってのバランスですごくうまくまとめられています。確かに、これがデビュー作であるということで、作品自体には荒削りな部分や微妙な違和感、ひずみも感じられますが、そういうのを割り引いても高い水準の作品であると思うし、その後の伊坂作品に通じる魅力があります。
 不思議な感覚に包まれたまま、島に足りない何かを考えながら、極めて美しいラストシーンに感動する。
 それが一番正しい楽しみ方という感じがしますので、あえて内容については触れないでおきます。
 ハードカバー版と若干の違いはあるらしいので、僕は僕が読んだほうの文庫版でプッシュしておきます。
  
 ※あ、あと「本ブログ」にこれを機に登録しておきました。